健康診断の「異常なし」がゴールじゃない? 忍び寄る「生活習慣病」と向き合う

2026.02.03
健康診断の「異常なし」がゴールじゃない? 忍び寄る「生活習慣病」と向き合う

【はじめに:痛くないからこそ怖い、「サイレントキラー」】

「先生、どこも痛くないのに、薬を飲まなきゃいけませんか?」 「健康診断で少し数値が高かったけど、元気だから大丈夫ですよね?」

診察室で、患者さんからよくこのようなご質問をいただきます。 お気持ちは、とてもよく分かります。風邪を引けば喉が痛み、骨折すれば激痛が走りますが、血圧が少し高くても、血糖値が上がっても、初期段階では体に何の「痛み」も「不快感」も生じないからです。

しかし、これこそが**「生活習慣病」「サイレントキラー」**と呼ばれる所以(ゆえん)です。

こんにちは。福岡県柳川市の「わたなべ内科クリニック」副院長です。 今回は、私たちが日々の診療で最も大切にしているテーマの一つ、「生活習慣病」について、少し掘り下げてお話ししたいと思います。一般内科医として、そして胃や大腸を診る消化器専門医として、皆様にどうしても伝えておきたいことがあります。


【1. 生活習慣病とは、血管と臓器の「老化」を早める病気】

生活習慣病とは、かつて「成人病」と呼ばれていたもので、食事、運動、睡眠、喫煙、飲酒などの日々の積み重ねによって引き起こされる病気の総称です。代表的なものに以下があります。

  • 高血圧症: 血管に常に高い圧力がかかっている状態。

  • 脂質異常症(高脂血症): 血液中のコレステロールや中性脂肪が異常値を示す状態。

  • 糖尿病: 血液中のブドウ糖(血糖)がうまく処理できず、溢れてしまう状態。

  • 高尿酸血症(痛風): 尿酸値が高くなり、結晶化して関節などに溜まる状態。

これらは単独でも問題ですが、恐ろしいのはそれらが**「動脈硬化」を進行させることです。 血管は本来、ゴムホースのように弾力がありますが、生活習慣病が続くと、古くなった水道管のように硬く、脆くなり、内側が狭くなってしまいます。 その結果、ある日突然、脳の血管が詰まれば「脳梗塞」、破れれば「脳出血」、心臓の血管が詰まれば「心筋梗塞」**といった、命に関わる事態を引き起こします。

「症状が出た時には、もう手遅れ」あるいは「後遺症と一生付き合わなければならない」。そうなる前にブレーキをかけるのが、私たち内科医の役割です。


【2. 消化器専門医だから見える、生活習慣病の「もう一つの顔」】

私は胃カメラや大腸カメラの専門医でもありますが、実は生活習慣病と消化器の病気は密接に関係しています。

例えば、「脂肪肝」。 「お酒を飲まないから関係ない」と思っていませんか? 食べ過ぎや運動不足によって肝臓に脂肪が溜まる「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」は、放置すると肝硬変や肝臓がんへと進行するリスクがあります。肝臓もまた、痛みを出さずに静かに悲鳴を上げる臓器です。

また、**「大腸がん」**のリスクも、肥満や過度な飲酒、加工肉の過剰摂取といった生活習慣と深くリンクしています。さらに、前回お話しした「逆流性食道炎」も、肥満による腹圧上昇が大きな原因の一つです。

つまり、生活習慣病をコントロールすることは、脳や心臓を守るだけでなく、胃や腸、肝臓といった大切な消化器を守ることにも直結しているのです。


【3. 「ダメ!」と禁止するのではなく、「どう付き合うか」を考える】

生活習慣病の治療というと、「あれもダメ、これもダメ」と医者に叱られるイメージがあるかもしれません。 「大好きなラーメンを一生食べてはいけないの?」 「仕事が忙しいのに、毎日運動なんて無理」

そう思って病院から足が遠のいてしまう方がいらっしゃいますが、それはとても勿体ないことです。 当院の治療方針は、**「患者さんの生活(人生)に寄り添うこと」**です。

完璧な優等生になる必要はありません。 「ラーメンを食べるなら、スープは残して、その分野菜を先に食べましょう」 「ジムに行けなくても、通勤の時に少し早歩きをしてみましょう」 「お薬の力を借りて数値を安定させつつ、少しずつ体重を落としていきましょう」

このように、今の生活の中で**「無理なく続けられること」**を一緒に探し、オーダーメイドの対策を立てていくのが私たちのスタイルです。薬はあくまでサポート役。主役は患者さんご自身です。


【4. 柳川の地で、長く元気に暮らすために】

柳川市は美味しいものがたくさんあり、自然も豊かな素晴らしい街です。 この街で、皆様にいつまでも美味しく食事をし、元気に歩き、笑顔で過ごしていただきたい。それが私の願いです。

生活習慣病の治療は、マラソンのようなものです。 短距離走のように一気に頑張るのではなく、長い距離を息切れしないペースで走り続けることが大切です。一人で走るのは辛いですが、私たちが伴走者(ペースメーカー)として隣でサポートいたします。

  • 健康診断の結果をまだ見返していない方

  • 最近、お腹周りが気になってきた方

  • 親族に脳卒中や心臓病の方がいて不安な方

まずは一度、お気軽にご相談ください。血液検査の結果を一緒に見ながら、「これからの健康戦略」を立てましょう。

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