胸のつかえや酸っぱい不快感…それ、「逆流性食道炎」かもしれません

2026.01.09
胸のつかえや酸っぱい不快感…それ、「逆流性食道炎」かもしれません

【はじめに:その不快感、我慢していませんか?】

美味しい食事を楽しんだ後、あるいは夜布団に入ってリラックスしている時。「胸が焼けつくような感じがする」「酸っぱい液体が喉まで上がってくる」「なんとなく胃のあたりが重苦しい」……そんな症状に悩まされてはいませんか?

「ただの食べ過ぎだろう」「歳だから仕方ない」と市販の胃薬でやり過ごしている方も多いかもしれません。しかし、その症状、実は**「逆流性食道炎」**という立派な病気である可能性が高いのです。

こんにちは。福岡県柳川市の「わたなべ内科クリニック」です。 今回は、当院の外来でも非常に相談の多い「逆流性食道炎」について、その原因から、胃カメラの専門医としてこだわる「お一人おひとりに合わせた治療」について詳しくお話しします。


【1. そもそも「逆流性食道炎」ってどんな病気?】

私たちの体には、本来、食べたものが胃から食道へ戻らないようにする仕組みが備わっています。食道と胃のつなぎ目にある「下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)」という筋肉が、普段はしっかりと閉じていて、食事が通る時だけ開く“逆流防止弁”の役割を果たしているのです。

しかし、何らかの原因でこの筋肉が緩んだり、胃の内圧が上がりすぎたりすると、強い酸性を持つ「胃酸」が食道へと逆流してしまいます。 胃の粘膜は酸に強い構造をしていますが、食道の粘膜は酸に対して無防備でデリケートです。そのため、逆流した胃酸によって食道が火傷(やけど)のような炎症を起こしてしまうのです。これが逆流性食道炎の正体です。


【2. あなたは大丈夫? セルフチェック】

逆流性食道炎の症状は、典型的な「胸焼け」だけではありません。以下のような症状に心当たりはありませんか?

  • 胸焼けがする(胸の真ん中あたりがチリチリ、カッカと熱くなる)

  • 呑酸(どんさん)(酸っぱい液体や苦い水が喉まで上がってくる)

  • 喉の違和感(喉に何かが詰まったような感じがする、ヒリヒリする)

  • 咳が続く(風邪ではないのに、特に食後や就寝時に咳が出る)

  • 声が枯れる

  • 胸の痛み(締め付けられるような痛みを感じる)

特に「咳」や「喉の違和感」は、呼吸器の病気と勘違いされやすく、内科を転々とした結果、実は逆流性食道炎だったというケースも少なくありません。


【3. なぜなってしまうの? 主な原因】

昔は日本人に少ない病気と言われていましたが、食生活の欧米化とともに急増しています。

  1. 加齢による筋力低下: 年齢とともに、食道と胃のつなぎ目を締める筋肉(括約筋)の力が弱まり、逆流しやすくなります。

  2. 食生活の乱れ: 脂肪分の多い食事(揚げ物、肉類など)は、消化に時間がかかり胃に長く留まるため、胃酸の分泌を増やし、かつ括約筋を緩める作用があります。アルコール、コーヒー、炭酸飲料、チョコレートなども影響します。

  3. 腹圧の上昇: 肥満でお腹が出ている方、妊娠中の方、あるいは猫背で前かがみの姿勢が多い方は、物理的に胃が圧迫され、胃酸が押し出されやすくなります。


【4. 専門医が伝えたい「胃カメラ」を受けるべき理由】

「症状があるなら、とりあえず薬で様子を見ればいいのでは?」と思われるかもしれません。 しかし、消化器内科医として、そして胃カメラの専門家として強調したいのは、**「その症状が本当に逆流性食道炎なのか、自分の目で確かめること」**の重要性です。

実は、**「食道がん」や「胃がん」**の初期症状も、逆流性食道炎と非常によく似た不快感を伴うことがあります。「ただの胸焼け」だと思って放置していたら、実は深刻な病気が隠れていた……という事態は絶対に避けなければなりません。 当院では、鎮静剤を使った苦痛の少ない胃カメラ検査を行っており、微細な粘膜の変化も見逃さないよう努めています。


【5. 軽症から重症まで、その人に合わせた「オーダーメイドの薬物療法」】

逆流性食道炎と診断された場合、治療の基本は胃酸を抑えるお薬になります。 しかし、一言で「胃薬」といっても、その種類や強さは様々です。

当院では、ただ漫然と薬を出すことはいたしません。 胃カメラで確認した**「食道の炎症の強さ(重症度)」と、患者さんが感じている「症状のつらさ」**を総合的に判断し、お一人おひとりに合わせた最適な薬を検討します。

  • 炎症が強く、症状も重い方: 粘膜の傷をしっかり治すために、酸を抑える力の強いお薬(P-CABやPPIなど)をしっかりと使います。

  • 軽症の方や、維持療法が必要な方: 症状が落ち着いてきたら、お薬の量を減らしたり、症状がある時だけ服用する方法に切り替えたりと、体に負担の少ないコントロールを目指します。

  • 炎症は見られないが症状がある方: 「非びらん性胃食道逆流症(NERD)」の可能性があります。この場合も、知覚過敏を改善するアプローチなど、患者さんの苦痛を取り除くための調整を行います。

「ずっと薬を飲み続けるのが不安」という方も、ぜひご相談ください。適切な時期に適切な薬を使うことが、結果的に早い回復につながります。


【6. 今日からできる! 生活習慣の改善ポイント】

薬物療法と並行して大切なのが、生活習慣の見直しです。

  • 食後すぐに横にならない: 食後2〜3時間は起きているようにしましょう。

  • 腹八分目を心がける: 食べ過ぎ・早食いは胃の内圧を高めます。

  • 寝る時の工夫: 症状が辛い時は、上半身を少し高くしたり、左側を下にして寝ると逆流しにくくなります。

  • お腹を締め付けない: きついベルトやコルセットは避けましょう。


【おわりに】

逆流性食道炎は、命に直結することは少ないものの、毎日の食事や睡眠という「当たり前の幸せ」を奪う厄介な病気です。 「これくらいで病院に行ってもいいのかな?」と迷う必要はありません。柳川市のわたなべ内科クリニックでは、皆様の不快な症状に寄り添い、確かな診断と、あなたに合った最適な治療を提供いたします。

胸のつかえが取れて、美味しくご飯が食べられる毎日を取り戻しましょう。お気軽にご相談ください。